Injury Time


15/10/23
カズからのエール

サッカーなるものが珍しかった40年近く前。静岡ではテレビからサッカー情報番組が流れ、サッカーが日常の光景としてあった。何を隠そう、日本でサッカーショップといえるものが初めてできたのも静岡です。
Jリーグが誕生するずっと前から市民クラブの清水FCがブラジルへ遠征し、少年団も海外チームと盛んに交流していた先進地で、高校で静岡を制するのは全国制覇と同じくらい難しかったほど。あるときの日本代表はメンバーの11人、ほぼ半数が僕も含めて静岡県出身だったくらいだから。
そんな静岡の清水エスパルスがJ2へ降格する。「その場しのぎの寄せ集め集団」と補強のあり方を問う声も飛ぶ。でも寄せ集めで勝っているチームもあるよね。選手を自由にさせて勝てば「のびのびが良かった」とされ、負ければ「のびのびさせて」規律が足りなかったと批判される。何が正解なんだか分からず、僕らの世界は結果がすべて。
世界の名門にも降格の歴史があり、浮き沈みを繰り返す。ちょっと怠ければだめになり、名前では生きていけない。いわば永遠の努力が必要なんだろう。サッカーライフはときに厳しく、険しい。でも乗り越えたときにまた強くなり、よりサッカーが楽しくなる。
僕が所属していたブラジルのキンゼ・デ・ジャウーは今や4部相当のリーグでもがく。それでもクラブは存在し、人々の希望として生きている。いつかまたサンパウロなどビッグクラブと戦う日を楽しみにしている。エスパルスも今が踏ん張りどころだ。自分たちがやっていること、サッカーで批判されているうちはまだいいんだ。一番怖いのは無関心。降格や低迷したことすら興味をも持たれなくなるのはつらいよ。
浮き沈みがあろうとも、ぶれず、ひと筋に生きてゆく。例えば長嶋茂雄さんや王貞治さんは、ずっと野球人。あれもこれも手掛けていく人もすごいけど、何かを心から好きで、真剣に続ける人々の仕事やお店、言動、言葉には、ならではの力があるよね。
損得勘定より「好き嫌い」の方が、生み出すパワーは大きいんです。人間だから損得は考えるよ。でも自分もそうだったけど、やはり好きの方が損得に勝る。

(10/23付 日本経済新聞)
「オリジナル10」であり、サッカー王国である清水のJ2降格は大きく報じられ、ネットにも原因を分析する記事が多数掲載されている。ただ、原因はひとつではなく、ここ1〜2年で始まったことではない。そして、犯人もゴトビひとりではない。
清水に嫌気がさし見捨てる人もいるだろうが、カズや多くのOBが清水にエールを送っている。
失ったものを取り戻すため、もう一度共に戦おう。私も降格の責任の何万分の一かは負わなければいけない犯人のひとりである。





LossTime 15/10/18  手のひらを太陽に





清水のJ2降格が決まった。考えてみれば港町の貧乏市民球団が、よくぞ今までJ1に居続けたものだ。これぞ王国の底力と言える。その王国を支えてきたのは地元出身の選手と生抜きの選手、そして地元企業と熱狂的なサポータ達だ。清水は育成型のチームであり、決して他チームのエースを引き抜いたりはしない。その“こだわり”によって清水は一時代を築き、そして現在の衰退を招いた。今の清水の地元出身選手の中にJ1に値する選手が何人いるだろうか?低いレベルで層が厚くなっているだけだ。

来季のJ2は、大宮が、磐田が、おそらくC大阪が抜けることによりJ1へのハードルは低くなる。清水は現有戦力でも十分にJ1昇格争いには加われるだろう。更なる補強に成功すれば、1年でJ1に戻ることは決して難しくはない。でも、それで良いのだろうか?それでは間違いなくJ1とJ2を行ったり来たりする二流チームに成り下がってしまう。同士達よ、ここは数年間我慢しよう。J1昇格はタイトルを狙えるだけの強固な基盤を作ってからでも遅くない。J2降格は今までズルズルと逃してきた基盤の再構築の絶好のチャンスでもある。

私は清水というチームをもっと長い目で見てあげたい。J1昇格は石毛や白崎、犬飼、加賀美、北川を軸とするチームに成長してからで良いと思っている。サッカー専用スタジアムで戦ってきた彼らが、来季は陸上競技場の荒れた芝の上で試合をする。今まで自分たちがどれだけ恵まれていたか痛感するだろう。土のグラウンドで泥だらけになってサッカーをしていた頃のハングリーさを取り戻し、成長し、逞しくなってからJ1に戻ろう。それでいいじゃないか。

来季は一体何人の選手がJ2清水に残ってくれるだろうか?他のチームからのオファーがそれほど多くの選手に来るとは思えないが … 大前や本田、櫛引、村田は残ってくれるのだろうか?地元出身選手の多くは残るだろうが、逆に杉山浩や平岡、村松、枝村等何人かの選手は要らない。ただ、難しいのは地元出身の選手達の“斬り方”だ。今回は事情が事情だけに、かつての伊東輝や市川の時のようにサポータとの間にしこりが残るようなこともないだろうが、それでも難しい。そんな地元選手へのチームやサポータの「えこひいき」的な愛情、それが今の王国の衰退をもたらしたと言える。

さて、監督は?実績のない監督にチームを任せるような冒険はやめよう。名古屋の監督を退任する西野さん、OBなら“後のない”三浦泰、数年で確実に昇格するなら反町監督を山雅から引抜く手もある。個人的には小林監督が好きだなぁ。

いずれにしても、今シーズンはまだ終わっていない。これからいろいろな細かいことが決まり、発表されるだろう。来季もともに戦おう。
『王国に太陽を 再び王国をJ1に』J2から這い上がって来た彼らのように。






選 手 だ っ て
彼らもみんな落ちている 落ちているから強いんだ
彼らもみんな落ちている 落ちているから燃えるんだ
この旗を大空に掲げてみれば 脈々と伝わる「王国の誇り」
浦和だって ガンバだって 広島だって
みんなみんな落ちた時から 立ちあがったんだ


監 督 だ っ て
彼らもみんな落ちている 落ちているから輝くんだ
彼らもみんな落ちている 落ちているから頑張るんだ
この拳を太陽に突き上げれば 必ず荒ぶる「オレンジ魂」
柏だって 神戸だって 東京だって
みんなみんな落ちた場所から 這い上がったんだ


清  水  だ  っ  て
清水は絶対生きている 生きているなら走るんだ
僕らは清水を信じてる 信じているから戦うんだ
この声をこの町に轟かせれば 確かに感じる「エスの鼓動」
清水だって 清水だって 僕たちだって
きっときっと「ディヴィジョン2」から 這い上がるんだ!



<< Back | Page Top | Next >>